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2024.03.29

K家住宅

K家住宅(明治8年ごろ築)個人所有

東京都指定文化財

所有者様のご厚意により

築150年を迎える個人住宅を拝見する機会がありましたので、折角なのでその一部をご紹介させていただきます。

約150年前の銀座の風景に高層ビルは一つもなく、西洋建築を取り入れたファサードの洋館が立ち並んでいました。当時の写真からも蓄音機の洋楽が流れてくるような雰囲気をかもしています。個々の建物が当時のトップモードを競っていたのだと思います。その建物のここが良い、あそこが良いと気に入ったところを随所に取り入れて建てたいう建物がK家、白い漆喰の壁、特徴的なゴシック調コラム(柱)、東西に伸びるベランダ、均等に配置された観音開きの窓に鉄板の鎧戸、これらの外観が美しいファサードを作り出し、モダンで気品にあふれています。

約150年前の銀座の写真

中に入ると土間にウサギに松、月を描いた漆喰壁 下方には網の扉があり鳥かごだったそうです。漆喰壁の絵柄には雲の中から跳ねている躍動感のあるウサギが2匹、詳しい方が見るとオスとメスを描き分けてあるそうです。子供をたくさん産むことから子孫繁栄を。次に波間に松。松の葉がかっこ良い。優雅な表情のおめでたい画材の漆喰壁には落款印が残っていますが、いろいろ調べても他にはどこにも存在していない落款印だそうです。

丁度建築中のころ伊豆の長八さんが江戸と川越に来ていたそうで、約3か月くらい足取りがわからないとのこと。もしかすると・・・長八さんがひっそりと腕を振るっていたのかも。こんな逸話も本当ではと思える漆喰壁でした。

茶の間の収納の引き戸の枠には、黒柿が使われています。黒柿の杢目には墨のような黒がらせん状に入り同じものがない唯一の材料であることから、聖武天皇の時代から京都の相国寺に総黒柿の書院造りや茶道具として人気の木材、また黒柿といえば、10,000本に1本しか取れないと言われている非常に貴重な木材です。古木になると心材が黒く変化するそうですがこれが伐採してみないとわからない。こうすれば黒柿が作れるというレシピは現在もないそうです。150年が経っても墨の黒さを華っています。

面材には、イチョウと銀杏の版画模様が摺られています。裏を返してみると、習字の練習や当時の貸付帳簿と思われる筆文字が、お話しによりますと擦った墨には防虫効果があるそうでできるだけ真っ黒になっている半紙の方が防虫効果が優れているとのことです。

自然が持っている特徴や性能、機能を適した場所に使用していることで、現存しているのではないでしょうか。

この他にも見どころポイントがたくさんありましたので、次の機会にご紹介できればと思います。今回はここまで。

田代でした。